色の名前
花を見た時に「美しい薄紫」と色の名前が浮かんで色を感じとります。色の名前は、色を感じ、色を表し、色を伝える最も基本的で太古から人類が使ってきた手段です。
ただ、色の名前と、それに対応する色彩とを広がりをもたせながら対応させておかないと本来の機能を果たすことができません。そのために、異なった切り口でよく使われる100色を選んで色名と印刷色のチャートを作りました。
さらに、パソコン用カラースウォッチと基本色彩語を掲載しています。
- 色名樹 日本の慣用色名100
- 色名譜 外来語色名100
- 中国百色名譜
- 系統色名百色譜
- NI配色用表色系 パソコンによるデザインのための配色用表色系
- 基本色彩語 色名の普遍性と進化
色名樹 日本の慣用色名100
色名は個々の民族の中で発生し、必要に応じて増加や消滅をしながら現代に至っています。 バーリンとケイというアメリカの人類学者が多くの言語を調べて色名のルーツを研究しており、彼らの説によれば民族に共通する原初的な色名があり、それらを基本色彩語と名付けています。
基本色彩語は、ホワイト、ブラック、レッド、グリーン、イエロー、ブルー、ブラウン、パープル、ピンク、オレンジ、グレイに集約できるとしています。これらの基本色彩語の他に固有色名と呼ばれるものがあります。いろいろなものを区別するために名前を付けますが、色を区別するために特定の色に付けた特定の色名を固有色名と言います。固有色名は必要に応じて発生した色名であり、時代、職業、地域など色名が生まれた状況によって色そのものの幅もあり、使い継がれていくうちに色の変化があったと考えることができます。この固有色名が長く使われ定着して現在も用いられているものが慣用色名です。
日本工業規格(JIS)に「物体色の色名」という規格があり、その中に147種の和名の色が選ばれ、その名の色の中心的なマンセル値を規定しています。 その中から100の色名を選んだものが、日本の慣用色名100です。人の色識別能力を根にし、基本色彩語を幹として育ってきた慣用色名ととらえ、樹木をイメージする形で表現しました。
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色名譜 外来語色名100
日常用いられる色の名前を慣用色名と呼びますが、時代ともに新陳代謝して使われないものは消えていき、必要とされるものが生まれてきます。
明治時代の文明開花に伴い、西洋の文物が日本に入ってきました。日本語にはカタカナという便利な機能があるためにカタカナで表記される英語を主とした外来語の色名が生まれ、慣用化したものが数多くあります。
科学技術を伴って入ってきたものに、絵具、染料や顔料があります。そのなかでも油絵具は全て色名が外国語でチューブや容器に書いてあるために、そのままカタカナで表記することになり、ジンクホワイト、アイボリーブラック、バーミリオン、ローズマダー、クロムイエロー、ビリジアン、コバルトブルー、プルシアンブルー、ローアンバー、バーントシェンナなどが生まれました。
また、宝石に由来する色名には、ルビー、エメラルドグリーン、コーラル、ラピスラズリ、ターコイズブルーなどがあります。地名に由来するものは、サックスブルー、ナイルブルー、ネープルスイエロー、マゼンタなどです。花や果物などの色からでは、アプリコット、オーキッド、オリーブ、オレンジ、レモンイエロー、チェリーピンク、トマトレッド、ヘーゼルブラウンなどが挙げられます。
数多く日本語化した色名の中から慣用化している100の色名を選んで、相当する色を近似的に表しました。
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中国百色名譜
100色名シリーズとして中国の色名を取り挙げました。中国において、日常的によく使われている色名を選定しました。調査の方法は中国科学院で編集された「色譜」(1957年)を原典としていますが、色票集などを参考に945種の中国語色名を色彩に関心の高い中国人約40人(男女比1対3)に依頼して、その表の中から「中国でよく使われたり、よく知られている色の名前を、100前後を選んで○印をつけてもらう」という方法で行ったものです。表は文字による色名の表記だけで、色票は付けていません。
「黒」以外は修飾語に紅、黄、緑、藍、紫、白、灰などの基本色名を組み合わせた色名構成が基本になっています。その調査結果を集計し、近似色の統合などの最低限の編集を行ない使用頻度が高いと評価された100の色名を抽出しました。
結果は、中国らしく赤系の色名が多く使われている他に赤の補色にあたる緑系の色が多いこと、白から黒にかけての無彩色が多いことが挙げられます。
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系統色名百色譜
系統色名とは「JIS Z8102 物体色の色名」という日本工業規格に規定されている色名をつける方法に従って作られる物の表面色の名前です。基本色名に修飾語を組み合わせることにより系統的に色の名前をつけることから系統色名といわれます。
基本色名は、有彩色に関し、赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫の10種。無彩色に関して、白、灰色、黒の3種の、合計13種です。修飾語は、有彩色の明度及び彩度に関する修飾語が13種、無彩色の明度に関するものが4種、色相に関する修飾語と、彩度の低い有彩色及び色味を帯びた無彩色に用いる色相に関する修飾語がそれぞれ5種ずつ定められています。
これらを組み合わせて有彩色260種、無彩色90種からなる350種の色名に集約し、物体の表面色の全てをカバーします。無彩色が多いのは、純粋な無彩色6種の他に色みを帯びた無彩色が含まれるためです。基本色名と修飾語には対応する英語と略号が決まっており、また、マンセル値によって各色名の範囲が決められています。そのことにより、全ての物体色を言葉で表現する機能に加えて、色を統計的に処理する際の分類にも便利に使えます。
系統色名百色譜では系統色名を理解しやすくするために、修飾語により構成される系統に応じて100色を選んで配置しました。
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NI配色用表色系 パソコンによるデザインのための配色用表色系
デザイン作業の大部分がパソコンで行われる時代です。 カラーデザインや色指定もCMYKの数値を入力するか、ソフトに付随したカラースウォッチライブラリーから適当なものを選んで使われています。
この表色系は新しいカラースウォッチの提案です。カラースウォッチには多数の色数をもち、自由に色を選べることを特徴とするものが多いのですが、色数が少なく配色がしやすいカラースウォッチは能率的にデザイン作業が進みます。 このパソコンによるデザインのための表色系は6色の無彩色と、ユニーク色相(心理的基本色相)4種とバイナリー色相(ユニーク色相の中間の色相)4種の合計8種の色相と15トーン(明彩調)の組み合わせによる120色の有彩色、更にビビッドトーンに8色を加えた合計134色の少ない色構成をもっています。
この全ての色のCMYK値が示されているために、選んだ色のCMYK値を個々に入力して使うこともできますし、パソコンにカラースウォッチとして保存しておき、選んだ色をペイントして使うこともできます。配色演習などの初歩のカラーデザインに利用することを目的に作成しているため、色相調和、トーン調和、類似調和、対照調和などの構成を考慮した表色系になっています。
各色は3色以内の原色の組み合わせにしているため、出力時の色の安定性が保てます。この中からトーンや色相を更に選択して、自分だけのカラースウォッチを作り、デザイン作業の効率化に役立ててください。
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基本色彩語 色名の普遍性と進化
文化人類学者のブレント・バーリンと言語学者のポール・ケイは、日本語を含む98の言語について調べ、単一の言葉で、語義に他の色名を含まず、特定の範囲の色を表現し、心理学的に顕著な特徴を指し示すという基準を満たす色名は、11に分類できるとして、基本色彩語と名付け1969年に発表しました。それは白、黒、赤(色)、緑(色)、黄(色)、青、茶(色)、紫(色)、桃色、橙(色)、灰色(鼠色)です。明暗から白と黒の基本色彩語が発生し、進化して色名が増えて行く過程を中央に示しています。日本においても、人が記憶していてよく使う20の色名をあげさせる調査を行うと、常にこの11色はその中に入っています。
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