宮崎秋人インタビュー3 〜バトンでつなぐ「明日のつくり方」〜
舞台なんて観たことも、興味もなかった
―芸能界に入られたきっかけをお伺いできますか
僕実は最初、保育士になりたかったんです(笑)。
子どもが大好きでしたし、小1から中3までピアノを習っていたからピアノも弾けるしと思って…保育士の仕事が実際どういうものかは経験していないので大変さはわからないんですけど、でも自分の周りにずっと子どもたちがいるって良いなあって思っていたんです。
女性が多いイメージは持っていましたが、きっと男手は必要だろうと思って、保育士を目指してオープンキャンパスまで行ったんですよ。
で、そこで女性の多さに引いてしまった(笑)。
その時オープンキャンパスには200人来ていたんですけど、男は自分を含めて5人だけ(笑)。当時は、女の子の友達も全然いなかったので、そこで諦めちゃいました。こんな状況は絶対ムリだ!って(笑)。
で、どうしようかなーと思ってた時に、たまたま小学校のバスケットクラブのチームの先輩が俳優になっていたのを知ったんです。
その人に「また会いたいな」っていうのがきっかけでした。小学生の頃は本当に憧れの先輩で同じコートではバスケできなかったけど、今度は同じフィールドで戦えたらいいなって。それで役者を目指しました。
それまでは芸能界に憧れたりとかはそんなになくて、飲食系に進むのもいいかなと思っていたくらい。ましてや舞台なんて、興味もなかったですからね。舞台というものを観たのも、役者を目指してからです。だから、10年前の自分からしたら今の自分なんて想像もつかないですよ。
客席を眺めた時、180度世界が変わった
―その舞台に、初めて立たれた時はどうでしたか
僕はアンサンブルで初めて舞台に立たせてもらったのですが、当時はほぼ素人のようなもので…。本当に失礼な話なんですが、最初にお話をいただいた時は、うれしさとか、感情がなんにもなく、「ああ、舞台なんだ」って…。ほんとに失礼ですよね。そんな気持ちで稽古に入っていました。
でも、そんな時に東日本大震災が起こったんです。
自分はまだスタートも切っていないのに、周りの人たちはみんなエンターテインメントのあり方を考えていました。震災が起こった今、エンターテイメントは求められているのか、いないのか…。 初舞台でいきなり「エンターテインメントとは何か?」という問いを突きつけられたんです。
僕は「経験もないしわかんないよ!」って、とにかくショックでしたね。でもいざ「やろう!」ってなって、本番を迎えてカーテンコールの時に客席を眺めた時、世界が変わりました、180度。「舞台ってすごい」って思いました。
小さい劇場でしたけどお客さんは満員で入ってたし、すごい拍手もたくさんあって…。正直、僕はそれ以外の記憶がないんです。
自分はセリフもないし、上手から下手へ歩いて行っただけなんですが、この十何メートル、いや10メートルもなかったかもしれないです…っていう距離が永遠に感じましたし、いつも自分がどうやって歩いてるのかも頭が真っ白になってわからなくなってたんです。
そんな中でこのステージの真ん中にいる人たちは、あんなに長いセリフを言って、これだけ感情むき出しにしてお客さんにぶつけて、お客さんはそれをちゃんと感じ取ってくれて…。
舞台俳優とお客さんの生のやりとりをしっかりと感じたし、なによりもこんな時にもこれだけの人たちに求められていて…。舞台上の先輩たちが、「自分たちが舞台に立ってて良いんだ」って確信を持った瞬間を目の当たりにした時、「自分もここにいたい」って思いました。
―すごい経験をされたんですね
そうですね、自分たちが「舞台に立ちたい」って思ってるだけでは成立しないこの仕事の難しさだったりとか、先輩たちが持っている感謝の大きさっていうのを一瞬で学ばせてもらって、もっともっと知りたいなって。突き詰めていきたいなって、思いました。
だから今は、本当に月並みな言葉になっちゃうんですけど、「立たせてもらってる」って、常に思っていますね、本当に。少し名前を知ってもらえるようになったのだとしても、自分が勘違いすることのないように…それだけは常に心に忘れずにいたいなって思います。
全部見抜かれて、丸裸にされる現場が楽しい
―今、舞台に立つ魅力はどこに感じていらっしゃいますか
やっぱりお客さんを感じられるっていうのが一番ですね。
自分はあんまりお芝居中にお客さんの顔を見られない方なんですけど、終わった瞬間にこれだけ人がいて…とか、良い笑顔のお客さん、涙流しながら拍手してくださるお客さんもいて、そうやって自分たちがやったことを受け取ってもらえているっていう実感がすごくあるので。それが僕にとっては中毒性のあることなんだと思います。
あとは、最近だと舞台『東京喰種』で共演した小越勇輝と原作のような関係性がつくれて、作品のために「自分ができることは全て板の上に置いてきた」って言えるくらいの経験ができたっていうことですね。
この作品を演出されているのが茅野イサムさんなんですが、茅野さんとだと自分はすごく丸裸にされるし、現場を楽しめるんだなって思いました。全部見抜いて、一切気を使わずに、でも愛をもって僕のできていないことなんかをズバズバ言ってくださるんです。その遠慮ない言葉が、本っ当にヘコみますけど(笑)、でも楽しいです、そういうのが。
―これからについて、宮崎さんはどんな未来を思い描かれていますか
なんだろうなぁ…。舞台はもちろん大好きで、一生やっていきたいなって思っているんですけど、今回ドラマ『男水!』に出させていただいて、もっと映像にも挑戦できたらなぁって思うようになりました。映画の世界も見てみたいです。
舞台は演出家さんによって本当にいろんな現場になるんですけど、映像だとどう変わっていくのかなって、まだまだ知らないことがいっぱいあるんで、たくさん知っていきたい。
あとは…個人的には「品のあるおじさん」になることが目標です(笑)。佐藤浩市さんや竹中直人さん、岩城滉一さんみたいに、背筋が伸びている方が好きなんです。女性をエスコートしている姿が素敵ですよね。
だから僕もボディラインを崩したくなくって!実はそのためにも今から身体づくりにこだわっていたりして…?40歳、50歳になってからいきなり筋トレはできないと思いますしね(笑)
次のゲストは「まりお」こと、黒羽麻璃央さん。まだ若いけど、ちゃんと先輩をたてるし、いつも笑顔だし、しっかりしてるんです。メッセージは「まりお〜 あんたの“さわやか”を分けてくれー。いつも笑顔だけど最近泣いたことは?みやざきより」!どうかな??(笑)
「エンターテインメントとは何か?」という問いを突きつけられた初舞台での経験が、謙虚に、そして向上心を持って前進する今の宮崎さんにつながっているのですね!さて、次回ゲストは宮崎さんと同じ『男水!』や、ミュージカル『刀剣乱舞』に出演される俳優、黒羽麻璃央さんのお話。こちらも見逃せません!
★次回掲載は1月23日(月)を予定。乞うご期待!
宮崎秋人 Shuto Miyazaki
1990年9月3日生まれ、東京都出身。ワタナベエンターテインメント所属。2011年、舞台「ROMEO×JULIET〜legend of painful heart」にて俳優デビュー。以降舞台作品を中心に活動中。主な出演作品はライブ・ファンタジー『FAIRY TAIL』主演、舞台『青の祓魔師 京都紅蓮篇』W主演、Dステ17th『夕陽伝』、舞台『つかこうへい七回忌特別公演「引退屋リリー」』、等。
2016年にはBSスカパー!オリジナル連続ドラマ『弱虫ペダル』
で連続ドラマ初出演。2017年1月よりレギュラーキャストとして出演する日本テレビ系ドラマ「男水!」に篠塚大樹役として出演する。2月9日から上演される舞台『柔道少年』では主演を務める。
公式HP:http://www.watanabepro.co.jp/mypage/10000057/
公式ブログ:http://ameblo.jp/shuto-miyazaki-we/
公式Twitter:https://twitter.com/shuto_mi
公式Instagram:https://www.instagram.com/shuto_miyazaki/
俳優集団D-BOYS公式HP:http://www.d-boys.com/
撮影:杉江拓哉
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